文化・芸術

2005/03/31

感想文!

右に掲げた本を紹介します。っていうか、仏教の本も含まれてるからなんなのか知りたいでしょ?

犯人に告ぐ 雫井脩介著 双葉社

面白いことは面白いのだが何かぴんと来ない。話がぶっ飛びすぎててリアリティがないとかそういうことでもない。リアリティならばあったと思う。むしろ、これほんとに必要かな?と疑問を差し挟みたくなるようなことがいくつかあった。
まず第一に植草と未央子の関係だ。テレビに出演している巻島を窮地に追い込むために創作されたのだろうが、作為の意図がありありで興ざめしてしまう。むりやり植草と未央子の関係を作っているのがわかる。
また、「ワシ」の扱い方だ。過去に傷を持つ男巻島という役どころを彼に与えたかったようなのだが、どうだろう、そんなに効果的に使われているかな?疑問だ。度々「ワシ」は登場してくるが物語を二つに分裂させてしまっている。読者に対する隠しだまにすらなっていない。またこれ絡みで有賀が出てくるが、突然現れて、突然死んでしまう。しかも真犯人かどうかもわからないまま。ついでにいっぺんに解決しとけばよさそうなものを、説教くさい口舌を述べるのには閉口するな。
孫の一平が誘拐されるのもなんだか都合がよすぎる。最初に出てきたときから多分誘拐されるよなと思ってみていたがやっぱりという感じで意外性がない。
娘いずみの病気がこれまた都合よすぎるような気がする。巻島はこれに気を取られ6年前の記者会見を失敗するのだ。だが、そうそう都合よく行くかよって思ってしまうし、何よりその後このネタが物語の中心的ネタから外れてしまっているから、これを最初にもってきて盛り上げなくてもさらっと伝聞風に描いたほうがよかった。物語の緊密性を失わせる処置ではないかと思う。
全体的に6年前のネタと現在のネタが連絡してないという印象を受けた。物語の分裂は避けなければいけないところだ。
ちょんぼ小川のキャラはよく書けている。なんといっても、どじな奴がいると物語の緊張の糸がほぐれる。最後の清水とのローラー作戦のところなんか、実によく書けていて思わず笑ってしまう。しかし巻島との連絡がない。緊密性にかけるのだ。それがないために、たいそうな手柄を立てるのに、与えられた役回りがあまりにも小さく矮小化されすぎてて面白くない。もうちょっと丁寧に扱ってもいいんじゃないかなと思う。
最後にテレビに出演しての公開捜査だが別にこれといって驚かなかった。今でも似たようなことしてんじゃんてな感じだ。週刊文春のミステリベストテンの1位に選ばれたのは多分このせいだと思うが、別にたいしたことないし、驚くに値しない。日常起こっている事件の方が刺激的すぎるからかぜんぜん奇異に思わなかった。警察がマスコミを利用しているのはこちらもお見通しってことか、若しくは作者の筆力が素晴らしいのかよくわからないが驚かなかった。こういう作品である。

ミカドの肖像 猪瀬直樹 小学館文庫

やはり、堤康次郎の存在感には驚かされる。やはり怪物だな。ブランドとしての天皇制を取り込むことによって、大衆の欲望を満たすというやり方がやっとこのみこめてきた。それは日本における大衆の出現と機を一にしていたということなのだろう。しかもこの大衆という新しい階級はアイデンティティの危機に直面していた。激しい社会変化の結果としての危機、それから、全ての人が万民という名称で語られる他人との差異を認識できない危機、そこに康次郎の活躍の余地があったのだなと思う。この本は天皇制を論じていながら実は大衆の発生とその性格について述べたものだなということが分かる。天皇制とはこの大衆の出現と無関係ではいられなかったのだ。
今の時代とのコントラストを思った。ここで作者が述べたような近代天皇制は曲がり角にきているのでは?そんな感覚を持った。日本の長引く困難な不況。伸張する中国。アイデンティティの危機は大衆社会の成立時よりはるかに深刻で、そもそも国家がこのままやっていけるのかさえ怪しい。戦争を禁じられ、スポーツくらいにしか分かりやすいヒーローが誕生しないこの国では、天皇の下に国民が集まってくる素地ができやすい。それが良いことか悪いことか今は判断のしようがない。だがいずれ、猛烈な不安心理の時代がやってくる。それはアイデンティティの危機をはるかに飛び越して、国家の危機というべきものだ。その時代は一体どうなるのだろう。天皇制だけでやっていけるのか、それとも新たな神を創出するのか(それは軍神になるのだろう)予想も付かないが、何かが起こる。今までとは違う強烈な事件がおきるとおもう。

龍樹 空の理論と菩薩の道 瓜生津隆真著 大法輪閣

難しい!心もとない。空とは実在の単純な否定ではないそうだ。僕は読んでいるうちに、実在の否定だとばかり考えていたから、こんな風に書かれてしまうと、さっぱりわからなくなる。実在の否定でなくてなんなのだ?あまりに深遠すぎてわからない。新たな課題が見つかったといえるのだろうか?難しいものです。大学行って勉強したくなってきた。
さて、難しい用語をマークした。これを、もって図書館に行って一つ一つ語釈するしかない。こういうところから征服していく本だね。

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