« 久々の投稿 | トップページ | 田村はまだか »

2008/10/08

のぼうの城

なかなか売れているらしい。帯には10万部突破の文字が躍っているし、スピリッツでこの小説を原作にした漫画が連載開始になっている。おそらくは映画にもなるだろう。

はじめに言っておくがつまらないということはない。ちゃんとスペクタクルがあり、男同士の友情や淡い恋心も描かれている。面白さ満載なのだが、妙に心に残らない。何故なんだろう?

人物の造形があまりにもありふれているからかもしれない。主人公たる成田長親の描き方方、石田三成の描き方がなんだかつまらないのだ。

関東北条家の一支城の城代たる、成田長親は普段は凡庸で城下の農民にまでのぼう様と言われる人物だ。のぼうとは木偶の坊の略だ。それが秀吉の関東攻略の大軍に囲まれる。ここまで書けばわかるだろうが、そしてなんとなく予想はつくのだろうが、危機に陥る城を長親は見事な統率力でもって対処していく。

一方三成は豊臣家の若き官僚として武功を立てることに邁進する。曲がったことが大嫌い。そんな三成がこの攻城戦に求めたことは人間は銭や武力で誇りを失わないということを確かめること。良き好敵手にそれを求めることである。

実に既視感に溢れているではないか。そんなに単純か?意地の悪い突っ込みも入れたくなる。さらに悪いのはこの作者は司馬遼太郎にあこがれがあるのだろうか、ストーリーの間に豆知識的な予断を挟み込むことだ。物語は緊密性を持たなければならないと僕は信じているのだがそれをズタズタにする行為は作家として厳に慎まなければならないだろう。予断を挟んでなお物語の緊張感を維持できるのは司馬ぐらいのものなのだ。

もちろん見どころはある。水攻めにされ突風のように襲いかかる城の描写は写実的で素晴らしいものだ。開戦を決める長親の描写は格差社会の現代にかなった文章だろう。だがそれにしても陳腐だ。期待が大きかったがゆえにがっかり感もひとしおとなってしまった。残念な作品ではある。

|

« 久々の投稿 | トップページ | 田村はまだか »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/95537/42725996

この記事へのトラックバック一覧です: のぼうの城:

« 久々の投稿 | トップページ | 田村はまだか »