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2007/11/22

兵士に告ぐ

自衛隊の今を伝える貴重なルポの第4弾だ。もっとも僕は第三弾の「兵士を追え」を読んでいないのであまりいい読者とはいえないのだが。

本書の特徴は一言でいえばわかりにくいということだろうと思う。今回は九州に新しくできた西部方面普通科連隊を中心にして描かれているが、日本の安全保障環境がそれまでの北海道中心から中国を睨んだ九州地域への改編時期にあたり、自衛隊のもっとも分厚いベールに包まれた部分を取材していることから来ているのではないかと思う。西部方面普通科連隊の凄さも役割も重要さもそこからくる隊員の葛藤もなんだかすりガラス越しに見ているような気がしてならないのだ。

おそらく大部分の日本人がわが国の安全保障環境がそれ以前と比べて大変難しくなっているのは理解していると思う。憲法九条に関する世論調査において改憲派増えているのはその証左であろう。だからこそ国家が何を考えどう行動しようとしているのか誰もが知りたいと願っているのだ。

本書の取材方法はそれまでの取材方法と変わらず、末端の兵士にインタビューをするというものである。時にはその厳しい訓練にくっついていくということまでしている。いわばボトムアップ式の取材方法と言えるだろう。本書に出てくる自衛官の階級でもっとも高いのは百十数名を束ねる中隊長である。それより上の階級の人にもインタビューを試みているようだがほとんど出てこない。名もなき兵士の呟きを聞き漏らすまいという姿勢は素晴らしいものだ。僕らが普段接する「自衛隊」は新聞やテレビに出てくる「自衛隊」であってその生の姿を垣間見ることはほとんどない。兵士の息遣いまで聞こえるようなこのルポはその意味で大変貴重なのだ。

だがそれでもわからないことが多い。例えば米軍との一体化である。より強固になっていく米軍との一体化の波を現場で捉えようとしているが、その波の正体が一体なんなのか正直腑に落ちない。本書ではミリミリの話や自衛官なのに射撃をちっともさせてもらえないS士長の話が出てきて、日本的な組織のあり方が解体されていくのを描いているが、それがどんな結果になってどんな幸不幸を招くのか描ききれていない。少なくとも自衛隊のなかにおいて米軍が神聖にして侵すべからざる存在であることはわかるのだがそれによってもたらされる影響の広がりと深さがわからないのだ。

おそらく必要なのは幹部自衛官が何を考えているのかを探ることなのだろう。それは国家の秘密に触れることでもありなかなか難しいことだとは思うのだが、もし次回作があるのならそういった点にもう少しつっこんでいただきたいと僕は思う。

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コメント

おはよう!!
もはやメールがわりのブログ・・・。
私に少しでも映画の知識があればいいのだけれど、まったくないんで「読み物」としか捉えることができず残念です・・・。
けれど私はビデオやDVD、あるいはFAXの使い方も知らんのでツタヤの前は素通りです(笑

投稿: りえ | 2007/11/24 09:35

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