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2007/11/18

ヘア・スプレー

公開されてから随分経つが今頃になってやっと見ることができた。やはりミュージカルは音響のいいところで見るべきものだと思った。この作品の音楽はみなノリが良くて楽しい音楽ばかりなのだ。それに衣装がとてもキュートだ。現代の目から見たらひょっとしたらダサさをも感じさせるものかもしれない60年代のファッションはおとなしめでありながら華やかさも失わない美しいものだ。ありていに言えばこの作品は楽しさに満ち溢れている。

さてどこから書くべきだろうか?この作品は表面上の楽しさの奥底に非常に重いテーマがどっしりと置かれている。

黒人差別が描かれているのだが、こういった作品が未だに作られて好評を博しているということはこの問題が現代アメリカが今まさに直面している問題であり、60年代から続く差別の克服に現在においても成功していないということの証明でもあるのだろう。

物語は60年代のアメリカの地方都市ボルチモアの放送局だ。この時代は今の感覚からでは理解できないが黒人の放送日というのがあったらしい。映画では「コーニー・コリンズショー」という若者に馬鹿受けの白人のダンス番組に月一回の黒人デーがあったという設定だ。

テレビの番組にもそんな差別があったのだというのだから驚く。もちろん映画はその差別の解消を目指して進んでいくのだが、僕が印象に残っているのは、「コーニー・コリンズショー」のホスト、コーニーが差別主義者の番組プロデューサーに言い放つラストのセリフだ。このラストでは番組内で白人と黒人が一緒になって踊り狂うのだがこのホスト、コーニーはその状況を指して「これが未来なんだ」と言い放つのである。

「これが未来なんだ」登場人物の一人に言わせたそのせりふの通りの未来はアメリカにやってきたのだろうか?おそらくそれは非常に苦い現実を言い表したセリフなのだろうと僕は思う。アメリカから伝わってくるニュースで黒人の暴動が起きましたなんてのは今でもたまに飛び込んでくる。ハリケーンカトリーナのとき、ロスの暴動。何年か置きに伝わってくるそのショッキングなニュースはアメリカが根源的に抱え込んでしまったストレスがちょっとしたことで爆発してしまうことをよく表していると思う。表面上の明るさとは裏腹にアメリカの社会というのは非常に緊張した状態が常に続いている社会なのだ。

「これが未来だ」と60年代の登場人物に言わせたその理想は現在においても理想のまま達成されることなくアメリカ社会の中に横たわっているのだと思う。

とはいえ、この映画はそんなに緊張して観るような思想性に溢れた作品ではない。楽しくハッピーな映画だ。むしろこう言ったほうがいい。重いテーマを華やかなダンスと楽しい音楽で軽やかに表現したものだと。製作者のその手腕がこの映画を非凡にしているのは間違いないだろう。

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