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2006年12月

2006/12/31

硫黄島からの手紙

クリント・イーストウッド硫黄島2部作の2部作である。

よく外国人である彼が、しかも敵国であるアメリカの監督さんがこれを作ったものであると思う。またこの作品を作ってくれたことに対して敬意を表したい。

さて、本作は戦争映画であるにもかかわらず徹底的にヒロイズムが排除された作品であるといえると思う。かっこよさもなければ自決の美しさもない。あるのは生な人間の姿だけである。

またこの作品は日本が一方的に、或いは日本に一方的に反省をする、求めるという作品ではない。昨年公開の「男達の大和」には贖罪意識の妙な説教臭さがあったが、この作品にはない。あるのは過酷な状況に追い込まれた人間達の自然な感情の揺らぎである。

この2部作に共通して流れるのは国家と個人の関係であると思う。国家が個人に求める過酷な要求に応えようとして苦悩する人間の姿を描いている。あるものは国家に殉じ、あるものは自分の生を追求し挫折し、あるものは自分自身を喪失してしまう。そこには国家に守られて生きていかなくては生きることができない個人の矛盾があるのだと思う。それは国家に対する単純な怒りではなくて、そのような環境に身をおかざるを得ない人間存在の皮肉というものなのだろう。この映画は国家に対する単純な怒りを表明するものではなく、また個人に起きた悲劇を嘆くのではなく、国家と個人の関係を冷静な目で観察することに主眼を置いているように思う。

なかなかこの2部作は考えるところが多い作品である。両方とももう一度見直してみたい。

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大奥

仲間由紀恵主演作にして、テレビでのヒットシリーズの映画版である。もっともこの作品はテレビシリーズを見ていなくても大丈夫なように作ってある。

本当は見に行くつもりなどなかったが、何となく見てしまった。お客さんはかなり入っていて期待の高さをうかがわせる。女性客が多かったのではないかと思う。

さて内容なのだが、すべてが豪華であった、出演女優もセットも衣装も。視覚的にはすごくてため息が出るほどなのだが、なんだかつまんない。ちっとも面白くないのだ。

この作品は二つの恋が描かれている。一つは主人公絵島と生島新五郎との恋。もう一つは絵島が仕える将軍生母の月光院と側用人との恋。封建制下しかも大奥の中の女性であるためこの二つの恋は許されざる恋という扱いになるのだろう。

しかし月光院と側用人との恋は許されざる恋という印象を素直に映画から受け取ることができるが、絵島と生島新五郎との恋はどうなんだろう?

思うにこの作者はこの二つの恋を効果的に対置することができなかったのではないか。おそらく構想としては対置させ、絵島と生島の悲劇をいっそう際立たせようという考えであったと思うが、それがうまくいかなかったのではないかと思う。悲劇が悲劇のように見えない、あるいは観客の方としては乗れない原因になってしまっている。

これは当然の帰結であるかもしれない。というのもこの恋の始まりの創作が間違っているのだと思う。この恋は大奥の勢力争いから端を発していて、初めから絵島をはめようという罠から始まった話なのだ。本作では絵島と生島はそれでも恋に落ちるのだが、あまり面白いものではなかった。もっと自然に出会い、愛し合いそれが自分達のあずかり知らぬところで大変な悲劇を引き起こすという点をもう少し強調したほうがよかったのではないかと僕は思っているのだが。

ただ、この手の作品は女性と男性では評価がまるで違うだろう。女性の感想を聞いて見たい気がする。

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2006/12/04

武士の一分

日曜日、かなりのお客さんが入っていた。座席のほとんどが埋まるほどに。やはり話題の映画なんだなと思った次第。中心は年配者だが、キムタク目当てだろうか、若い人もかなりいた。これを一つのきっかけにして時代劇の裾野が広がってくれたらうれしい。

映画を見た感想はとにかく見てくれということだ。僕の陳腐な感想などを寄せ付けない魅力がこの映画にはある。

この映画の登場人物たちはみなすがすがしい。日常をつつましく生き、辛いこともあろうが明るさを失わないその姿勢が好ましい。

特にラスト主人公の「私は間違っていたのかもしれない」という述懐は人間の愚かしさや後悔してももはや手遅れという情けなさがよく現れていて、僕には決闘のシーンよりも鮮烈に印象に残っている。まさにあのシーンがなければこの映画の中で葛藤し傷ついた者達が救われないと思うのだ。日本映画史に残る名シーンだと思う。

素晴らしいの一語に尽きる。できればもう一度劇場で観てみたい作品だ。

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