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2006/11/09

人間そっくり

僕がこの本を初めて読んだのは大学生の頃のことだから、10年近く前になるだろうか。ある先輩に勧められたのがきっかけだった。その当時どんな感想を持ったか細かいことはもはや覚えていない。今これを再読しての感想は鮮やかということにつきるだろうか?

恐らく難しく論じるならば、この作品の主題は自分で自分を認識するその基盤の脆弱さ、さらに言うならば、自己と他者の境界線の曖昧さということになるのだろうが、そんなことを吹き飛ばすほどの力のある作品だ。僕はこの作品を読んで日本刀の切れ味の鋭さを思い浮かべた。それくらい強烈な切れ味を持った作品だと思う。

物語は極めてシンプルだ。ラジオドラマを打ち切られそうになって切羽詰っている作家とどこにでもいそうなありふれたサラリーマン風の男。作中この二人以外ほとんど出てこない。ほとんどすべて会話で充たされていて、間違いなく地球人だと思っている作家が追い詰められ、やがて自分の存在に懐疑的になる。特にクライマックスの部分、作家がサラリーマン宅に行き、それまでサラリーマンがしゃべっていたことを、今度はサラリーマンの女房相手にそれを再現してみせる手管など鮮やかすぎて、読んでいる僕はぐうの音も出なかった。拍手さえしたい気分だった。

ぜひ一読することをお奨めしたい。案外これを読んでいる人全員火星人だったりして。そんなことを想像して、ニヒヒと笑ってしまう。

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