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2006/10/02

薄桜記

この映画を一言で言い表すならば「儚げ」ということだろうか。

市川雷蔵主演、昭和34年公開の映画でDVDで見た。

物語は吉良邸討ち入りに向う堀部安兵衛の回想で始まる。

堀部がまだ中山姓を名乗っていた頃、名高い高田馬場へ向う途中江戸から地方に向う丹下典膳とめぐり合う。典膳は安兵衛にその襷では解けるといけないと助言されるが運悪くその助言を聞き逃し、そのまま決闘上に向ってしまう。典膳もまた胸騒ぎを覚え高田馬場に赴く。そこで見たものは典膳と同じ知心流の同門を倒す安兵衛の姿だった。典膳は幕府のお役目の途上であり、加勢はできぬと思いその場をすみやかに立ち去る。

ところが典膳の高田馬場での態度は同じ門人たちの知る所となり、加勢をしなかったことで同門の人々からの恨みを買ってしまう。典膳は破門されてしまう。

だが、典膳への恨みは破門ごときでは晴れず、夕暮れの橋の上で典膳は門人達に襲われる。切りかかる門人達と戦う典膳。殺しはしなかったが一生残る傷を門人達にのこした。

高田馬場で名を上げた安兵衛には多くの縁談と仕官の話が転がり込んでくる。安兵衛は上杉家の家臣の娘、千春に心を寄せるが、千春はなんと典膳に輿入れをしてしまう。傷心の安兵衛は赤穂藩の堀部家に養子に入ることを決断する。

一方典膳は千春と仲睦まじい家庭を築くが、京都出張のおり家を留守したところに傷を負わされた門人達に丹下家は襲われ、千春は犯されてしまう。

その事実を知った典膳は苦悩する。心無い門人達は千春が不義を働いたと言いふらしていた。このまま千春を離縁すれば千春を追い詰めてしまう。だがこのまま夫婦を続けていては典膳の武士としての名が傷つく。一計を案じた典膳は千春を疵つけぬよう実家に帰すが納得できない実家の兄は典膳の片腕を切り落としてしまう。

隻腕となった典膳は門人達への復讐を誓う。

長々とあらすじを書いてしまった。ま、その後もあるのだがそれは本編のお楽しみってことで。

昭和34年というと勿論僕は生まれてないわけで、どういう時代状況だったかよくわからないが、まだまだ映画が娯楽の王様に君臨している時代だったのではないかと思う。

この作品の冒頭部で安兵衛が高田馬場に走っていくところなどはなんと創意工夫にあふれているかと思う。画面を斜めに切り走る安兵衛と空の情景を上下の位置関係を逆にしてとっているところなどなかなかのものだと思う。CG全盛の時代を知っている者からすれば幼稚と考えられなくもないが、CGがなかったことを考えればすごいことではないかと僕は思う。

またこの映画は美しい日本の風景を残していると思う。今の時代ではなかなか見ることができない風景の連続で、現在の日本の風景のなんと歪なことか。月並みな感想だが、経済発展は日本を豊かにしたが、その過程で本当に多くのものを失ったと思う。残念な気持ちがちょっぴりわいた。

そして雷蔵である。儚げな美しさをもった男がこの世にいるなんて!ほとんど奇跡だと思う。今の時代に何で生きていないのかと思う。ぜひこの映画を見て欲しい。ここには現代日本では想像もつかない男が生きているのだ。ぜひ見て欲しい。

僕はクライマックスが素晴らしかったと思う。決闘で斬られた典膳、胸を鉄砲で撃たれた千春。雪の中を這うようにして典膳の手を握るその姿は愛の理想的な形に思えてならない。この決闘に助太刀に入った安兵衛は皮肉にもじっと二人の姿を見守るのだが、絶命せんとする二人の愛の深さを知り、安兵衛は言葉には表さないが、この二人の間には立ち入れないと悟ったのだと思う。安兵衛が千春に心を寄せていただけにこのシーンはグッと来る。

だが、この映画は現代人、恐らくは現代女性にはほとんど理解されないだろう。古臭いと思うだろうし、下手をしたら怒り出すかもしれない。おそらくその原因は千春の造形に起因するのだと思う。千春はあまりに封建的な世界の女性として描かれている。夫に献身的で耐える女で、男達の意思に自分の運命を翻弄され、あまりにも主体性がないように見えるだろう。確かにそれはその通りで、やはり映画も時代の子だという感想を持たざるを得ない。だが、そんな中でも分かれた夫に捧げる一途な愛は否定されるべきものではなかろう。どんなに時代が変わろうとも、どれほど女性の地位が向上しようとも、この純粋さは輝いていると思うのだがどうだろう。僕はこういった一途な純粋さまで否定するような社会になったら日本も終わりだと思っているのが。

見て損は絶対にない映画だ。是非是非見て欲しいと思う。

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