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2006/10/10

フラ・ガール

傑作と評して良いと思う。それくらい素晴らしい出来だった。特に最後のダンスシーン素晴らしかった、迫力があった、美しかった。これはぜひとも劇場で観るべき作品だと思う。DVDではその面白さ素晴らしさが伝わらないだろうと思う。

廃坑寸前の福島の炭鉱が舞台だ。大規模な人員削減が実施され不安におののく炭鉱町にハワイを作ろうというプロジェクトが持ち上がる。常磐ハワイアンセンターだ。そこの目玉としてフラダンスチームを結成することになる。チームといってもダンサーは全員炭鉱町に住む女の子達でダンス経験はゼロ。そもそも本物のフラダンスを見たこともない子達ばかりなのだ。とりあえず集まったものの、フラダンスの八ミリ映画を観て、露出の多い衣装と艶っぽいダンスにビビリ皆逃げ出してしまう。残ったのは高校には行けず幼い兄弟の面倒を見ていた早苗と早苗に誘われた紀美子、事務をやっていた子持ちの初子、それに盆踊りが得意だというだけで父親に連れてこられた小百合だった。

そこに東京からフラダンスの先生がやってくる。昼間から大酒を食らって、だけど色白で美人で派手な衣装の先生だ。真っ黒くて朴訥な炭鉱町には不釣合いな先生だ。はっきりいって先生はやる気がない。ど素人に教えるなんてそんな気はさらさらないのだ。

生徒達も先生のやる気のなさを見抜いたのか、反抗的だ。だが、あるときその先生のダンスを垣間見て本気で教わりたいと願うようになる。

とまあ、話はこんな具合に進んでいく。

僕はこの映画を観ながら思い出していたのは、リトルダンサーとスウィングガールズだった。

リトルダンサーもあれも閉山間際の炭鉱町が舞台であった。しかも同じダンスを取り扱っていた。製作者達はこの辺は意識していたのではないかと思う。本作の主人公紀美子は父のいない家庭に育っていたが、厳しい母親にフラダンスを習っていることを内緒にしてしまう。後にばれてこっぴどくしかられるのだが、リトルダンサーの場合は父親にしかられる。両主人公はそれでもダンスを続けるのだが、違うところはリトルダンサーの場合は「男がバレエなんて!」という男らしさ女らしさに立脚した批判であるのに対してフラガールでは女の子が肌の露出が多いのがはしたないという感情があるにはあるが、無慈悲な炭鉱会社の仕打ちに対する怒り、またはハワイアンセンターを作るという会社方針に対する怒りに立脚していることだろう。もちろんフラガールの母親も時代の子であるからダンスやるくらいなら選炭婦をやれというのだが、それはどちらかというと性差を意識した感情というよりも先祖代々炭鉱で働いてきた誇りに根ざした感情から来る発言であったように思う。本作品は時代の波に飲み込まれかかっている人々の伝統に対する誇りの感情と新しい時代に順応しようという若々しい鮮烈な情熱の相克であると僕は思う。

またスウィングガールズとの対比では時代状況の違いというものを感じざるを得なかった。スウィングガールズはくしくも同じ東北が舞台になっていて、登場人物たちがまったく新しいことをしようとする女の子たちの物語であった。しかもちゃんと彼女達を教え導く先生がいるというところまで同じである。もっともスウィングガールズでの先生はあまり頼りになりそうもない先生だったが・・・・・。スウィングガールズに出てくる女の子達はやる気がなくて、空虚で何か夢中になれるものがなく、たまたまジャズに出会ってしまったという感じの極めて現代的な女の子達だ。たくさんの選択肢があるなかでジャズを選び夢中になっていくその様は自分探しの旅といえるだろう。最後のジャズの演奏シーンはそうした自分探しの旅の果てに現れる自己実現の表現であったと僕は思う。しかしフラガールに現れた女の子達はスウィングガールズに現れた女の子達と似ているようで実は全然違う。彼女達はたくさんの選択肢などなくダンスしかなかった。早苗のセリフに「今の状況から抜け出したい」といって紀美子を誘うのだがこのセリフに端的に現れているように選択肢などないのだ。自分探しなど贅沢な悩みであるのだ。またハワイアンセンターというプロジェクトそのものも街を救うための起死回生の一発逆転を狙ったもので、街を救わねばならないという使命も彼女達は帯びている。時代状況の過酷さのなかでもがいているのだ。炭鉱の落盤事故で小百合の父親が死にその死に目に会えないというシーンが出てくるが、このシーンはただ単に彼女達のプロ意識の高まりという表現にとどまるだけでなく、逃げ道のない状況に対する覚悟のシーンであると思う。それゆえに映画から受ける感動の質が全然違う。最後のダンスシーンはより過酷な状況に置かれた者の努力の果ての成功と受け取ることができるのだ。もちろん自分探しや自己実現などもあるにはあるだろう。だがそれは結果的についてきた副次的なものでしかなく、時代状況に果敢に挑戦し新しい扉を開いていった者たちの物語だと僕は思う。もしこの作品のことをスウィングガールズと同類と看做す者があるのだとしたならばそんな奴は軽蔑すべきだとさえ僕は思う。

ぜひ観て欲しいと思う映画だ。特にダンスシーンは素晴らしい。絶対に劇場で観るべき作品だと僕は思う。お勧め映画だ。

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人生には降りられない舞台がある・・・。まちのため。家族のため、友のため、そして自分の人生のために、少女たちはフラダンスに挑む。 ■監督・脚本 李相日■キャスト 松雪泰子、蒼井優、豊川悦司、山崎静代(南海キャンディーズ)、富司純子、岸部一徳、高橋克美□オフィシャルサイト  『フラガール』 昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。 「求む、ハワイアンダンサー」の貼り紙を見せなが... [続きを読む]

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